私たちは、障害者支援施設で、知的障害のある方々の生活サポートを行っています。彼らが地域で自立した生活を送る上で、大きな壁となるのが「ゴミ屋敷」の問題です。今日は、その支援の現場のリアルについてお話ししたいと思います。私たちが関わるケースの多くは、近隣住民からの苦情や、公共料金の滞納がきっかけで発覚します。家を訪問すると、そこには想像を絶する光景が広がっています。しかし、私たちはその状況を見て、本人を責めることは決してありません。なぜなら、それが本人の「せい」ではないことを知っているからです。例えば、ある利用者さんは、カレンダーの日付や曜日を理解することが難しく、ゴミの収集日を覚えられませんでした。また、別の利用者さんは、スーパーで「お買い得」と書かれた商品を見ると、必要かどうかを判断できずに、あるだけ買ってしまう特性がありました。その結果、家は未開封の食品で溢れかえっていたのです。私たちの支援は、まず本人との信頼関係を築くことから始まります。彼らは、過去に「だらしない」「なんでできないの」と叱責された経験から、他人に対して強い不信感や恐怖心を抱いていることが多いのです。私たちは、本人のペースに合わせ、一緒にゴミの分別をしたり、写真やイラストを使った分かりやすいゴミ出しカレンダーを作ったりします。金銭管理については、毎週決まった額のお小遣いを渡し、買い物に同行する「買い物トレーニング」を行うこともあります。重要なのは、単に家をきれいにすることではありません。本人が、自分の力で生活を維持していくためのスキルを、一つずつ身につけていけるよう、根気強くサポートすることです。しかし、支援には限界もあります。現在の人員では、全ての対象者に十分なサポートを提供できていないのが実情です。知的障害のある方々が、地域で安心して暮らし続けるためには、専門の支援者だけでなく、近隣住民の方々の温かい見守りと、社会全体の理解が不可欠なのです。
支援者が語る知的障害とゴミ屋敷問題のリアル