賃貸物件の大家として、入居者の部屋がゴミ屋敷になっているのを発見した場合、その対応は非常に困難を極めます。さらに、その入居者に知的障害がある可能性が考えられる場合、大家としての対応は、より一層慎重かつ福祉的な視点が求められます。まず、大家として絶対にやってはいけないのが、感情的に入居者を責めたり、無断で部屋に入ってゴミを処分したりすることです。入居者には居住権があり、これらの行為は法的に問題となるだけでなく、知的障害のある入居者を極度の混乱と恐怖に陥れ、事態をさらに悪化させるだけです。大家が取るべき最初の行動は、一人で問題を解決しようとせず、速やかに関係機関と連携することです。まずは、入居者の緊急連絡先や連帯保証人となっているご家族に連絡を取り、状況を説明し、協力を求めましょう。しかし、ご家族との関係が良好でない場合や、そもそも身寄りがないケースも少なくありません。その場合は、お住まいの市区町村の「福祉担当窓口」や「地域包括支援センター」に相談してください。「アパートの入居者が、知的障害があるかもしれないが、ゴミ屋敷状態で生活が困難になっているようだ」と伝えることで、行政のケースワーカーや保健師といった専門家が介入し、本人へのアプローチを開始してくれます。行政の介入は、本人の生活を守るだけでなく、大家にとっても法的な後ろ盾となります。家賃滞納が発生している場合は、法的な手続き(契約解除や明け渡し請求)を検討する必要も出てきますが、その際も、相手に障害がある可能性を考慮し、弁護士と相談しながら、福祉的なアプローチと並行して進めることが望ましいでしょう。大家の役割は、単に家賃を回収し、建物を管理するだけではありません。時には、社会的なセーフティネットの最前線として、入居者の異変に気づき、適切な支援に繋げるという、重要な社会的役割を担うこともあるのです。